七味缶デザインに隠された秘密を初公開!
七味缶100周年記念展の裏側に迫る
ゲスト - 八幡屋礒五郎 常務取締役 室賀ゆう貴
2024年08月23日
多くの皆さまに愛されてきた「信州の名物」ともいえる、八幡屋礒五郎の七味缶。その唯一無二のデザインが今年、誕生から100周年を迎えました。
この100周年を機に、2024年4月26日〜5月6日まで長野県立美術館で企画展「七味缶 食卓であゆんだ100年」が開催されました。
八幡屋礒五郎の歩んできた歴史や、七味缶のデザインに込められた秘密が明かされた今回の企画展。
展示レポートと共に、常務取締役・室賀ゆう貴に企画展への思いを聞きました。
株式会社八幡屋礒五郎 常務取締役
15歳の時に単身留学し、カナダの高校を卒業。帰国後は上智大学に入学し、卒業後は新宿伊勢丹に入社。数年の勤務を経て八幡屋礒五郎に入社し、現在はSHICHIMIの文化を全世界の食卓に届けるため、挑戦を続けている。
知られざる「七味缶」のセカイを大解剖
会場内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んできたのは高さ180cmにも及ぶ巨大な七味缶のオブジェ。普段は食卓のうえでメインの料理を引き立てる「脇役」として佇む七味缶も、100周年とあってはまさに主役として堂々たる存在感を放っています。
展示の内容は、南米原産の唐辛子が日本、そして信州に伝来してきた歴史にはじまり、八幡屋礒五郎の七味に欠かせない七つの素材、そして七味の製造過程など。
今まであまり大々的に公開されてこなかった「七味缶デザイン」にまつわる、いくつかの秘密も明らかにされました。
そして、八幡屋礒五郎の七味缶といえば、さまざまな企業やブランドとのコラボ缶、そして2006年にはじまった「イヤーモデル缶」の存在です。イヤーモデル缶とは、お馴染みの唐辛子と善光寺本堂の絵柄を、その年にふさわしいテーマに変更して限定販売している商品のこと。
今回の展示では、過去にコラボした限定デザイン缶やイヤーモデル缶の現物がずらり大集合。七味缶ファンのみならず、初めて見る人にとっても思わず再販を願わずにはいられないような秀逸なコラボデザイン缶は目を楽しませてくれました。
七味缶の誕生から100年、八幡屋礒五郎の誕生からは288年。信州の食卓をひっそりと、しっかりと支えてきた七味缶について、ここまで大規模な展示を開催したのは初めてのこと。
「すべてが大変だった」と笑いながら話してくれたのは、常務取締役・室賀ゆう貴。企画展実施への道のりと、本展示に込めた思いを語りました。
長野の歴史と共に歩んできた七味缶
まずは、今回の企画展「七味缶 食卓であゆんだ100年」を開催することになった経緯を教えてください。
常務
2024年に、七味缶が誕生して100周年を迎えました。普段は家庭用調味料なので光があたることは中々ありません。弊社のCMでも「おいしいのはお蕎麦です」とお伝えしているように、メインはお料理です。
ですが、100周年くらいは……ということで、「私たちはこういうものですよ」のご挨拶も兼ねて、企画展を開催させていただくことになりました。これまでに誕生したさまざまな七味缶を中心に、八幡屋礒五郎の歴史と新しい挑戦についてご紹介しています。
期間中、とくにGW中は来場者の数もすごかったですね。あらためて八幡屋礒五郎、そして七味缶が老若男女問わず愛されていることを実感しました。
常務
そうですね。想定よりもかなり多くのお客さまにお越しいただけました。開催前日まで時間をかけて準備していたので、多くの反響をいただいてうれしい限りです。
今回の企画展にあたって特に苦労したことはありますか?
常務
いやー、全部ですね(笑)。毎日少しずつ修正を重ねていて、「どうして先週の時点で気づかなかったんだろう?」ということもありました。ですが、特に時間がかかったのは「イヤーモデル缶で見る 長野と八幡屋礒五郎のあゆみ」でしょうか。
常務
八幡屋礒五郎や七味缶が長野の歴史とともに歩んできたこと、それが一番伝わるのはなんだろうと考えた時に、やはりイヤーモデル缶の存在は欠かせません。もう少しでこの取り組みを始めて20年が経ちます。
イヤーモデル缶は、その年の象徴になるものがデザインされていて、最初は長野市や北信が中心だったのですが、今では県内全域に広がっていっています。
常務
お客さまに展示を見ていただいて、その年の出来事や思い出を振り返っていただけるのはうれしいですね。ここだけの話、最初の構想ではパネル1枚ぶんしかなくて、もっと小さな扱いの予定だったんですよ。でも、イヤーモデル缶はお客さまにも馴染みがあり、デザインが思い出を振り返るきっかけになると思い、途中で大きな展示に変更しました。
こうして過去のデザインを並べていると、多くの方から「これまでのイヤーモデル缶を全種類、再販売してほしい」というご意見をいただきます(笑)。現実的な話、ロット的になかなか難しいところはあるのですが、どこかで実現できたら、とは思っています。
今回の企画展で、缶のデザインに「隠れ唐辛子」がいることを初めて知った方も多いのではないでしょうか。
常務
あまり大々的に宣伝はしてこなかったのですが、実はすべての缶に唐辛子の隠れイラストが入っています。デザインによってわかりやすさに差はありますが、最初のデザイン缶からずっとやってきているので、商談の際などにポロっとお伝えすることはありました。
見つけるのが一番難しいのは、2017年のイヤーモデル「ながの銀嶺国体缶」かもしれません。展示のイラストではすぐ見つけられたと思うのですが、実物の缶では光に反射しないと見えない仕様になっています。
イヤーモデル缶のデザインに何を採用するかはどうやって決めているんですか?
常務
毎年、年始にイヤーモデル缶を発表します。そのために前年の5月から8月頃までにテーマを決めて、使用の交渉、許可がおりたらデザインの参考にする写真を撮りにいって、それをもとにデザインを書き起こす、という流れです。毎回、トータルで半年くらいは時間がかかりますね。
なかでも時間をかけるのがテーマ探しです。毎年、はやめはやめに考えようとは思うのですが、なかなかそうもいかなくて……(笑)。
常務
イヤーモデル缶のデザインには、すごく可能性があると思っています。今までは本社が長野市にあることから、どうしても北信のモチーフを取り入れることが多かったのですが、これからは松本缶のように県内の広い範囲で題材を探していきたいですね。今後100年、200年と続いていくためにも、八幡屋礒五郎の七味が「信州発」であることを長野県のみなさんに誇ってもらえるような企業でありたいと思っています。
100年続いてきたものを、100年後の未来へ
今回の展示をみていて感じたのは、100年経っても褪せることのないデザインの秀逸さ、そして時代に合わせて変化することを恐れないしなやかさと、時代を経ても変わらない芯の強さです。
これまで100年の歴史を築き上げてきたものを、これから100年後の未来に残していくことのほうが実は難しいのかもしれません。けれど、長野という土地に根差してきた七味缶の存在は、これからも変わらず地元の人々の食卓をそっと支えていくのだろうと思います。
今後、八幡屋礒五郎がどれだけの「懐の深さ」でどんなコラボ企画を実現していくのか……楽しみにしていきたいです。