江戸の日本橋薬研堀町は医者や薬問屋が多く、別名「医者町」で通っていたと言われております。この地で、1625年(寛永2年)初代からしや徳右衛門が、漢方薬を基に生薬を組み合わせて《七味(七色)唐辛子》を売り出し、江戸中に広めました。当時は薬効が期待され寺社の門前で販売されることが多く、やがて江戸の食文化の伝播と共に日本全国に広まっていきました。
先人が知恵を絞って考え出した日本独特の香辛料《七味(七色)唐辛子》は、いつの頃からか「三大七味」と呼ばれる三軒の暖簾を生みました。
店舗 | 素材 |
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やげん堀 | 唐辛子、焼唐辛子、黒胡麻、山椒、陳皮、けしの実、麻の実 |
七味家本舗 | 唐辛子、山椒、麻の実、白胡麻、黒胡麻、青のり、青紫蘇 |
根元 八幡屋礒五郎 | 唐辛子、陳皮、胡麻、麻種、紫蘇、山椒、生姜 |
【やげん堀】は2種の唐辛子で辛さに深みを出し、香り高い山椒や胡麻の風味が特徴です。【七味家本舗】は唐辛子以外すべて香りを持った素材を用い、香りを立たせています。【八幡屋礒五郎】は、辛味と香りの調和のとれた独特の味わいです。
このように七味唐辛子を構成する素材には厳密な定義がありません。店ごとにそれぞれの《七味》があり、 その調合に工夫があり、それが味や香り、色などの特徴となって表れています。
店名の【やげん堀】は、両国橋近く(現在の中央区東日本橋)に薬研(漢方薬を粉末にする器具)の形に似た堀があったことから、附近を薬研堀町と名付けました。初代がこの地で、七味を創製したことが店名の由来です。
創業1625年(寛永2年)初代からし屋徳右衛門が、漢方薬からヒントを得て、吟味した7種の素材で創ったのが始まり。大辛、中辛、小辛に辛ぬき…現在も変わらずに創業当時からの調合販売というスタイルを守っています。近年は和食だけに限らず、洋食にも合うハーブ系の七味唐辛子も人気です。
創業当初は現在の地にて清水寺へご参拝される方々に唐がらしを浮かべた〈からし湯〉などをお出ししていた茶店でありました。いつの頃からか〈七味唐がらし〉を専門に商うようになり今日まで皆様にご愛顧頂いております。
創業1655年(明暦年間)。弊舗の唐がらしは「風味が命」。良質の原料にこだわり、一子相伝の調合方法を守り、京料理の絶妙な味わいを損なうことなく、より引き立てる薬味として「ひと手間の良さ」を今日もお客様にお届けしております。
元文元年の創業より、連綿と忠実に受け継がれ、愛されてきた《七味唐からし》は、善光寺名物中で最古のものです。御高札前で販売し、卓絶な風味は“善光寺参りの手形”とまで云われてまいりました。
《七味》は、風味が信条の素材で作られた食品です。その風味は、開封して空気に触れた瞬間から徐々に落ちていくもの。少しずつ購入し、開封後は早めに使い切ることで、最後まで美味しく召し上がっていただくことができます。迷われているお客様には小袋をお薦めしています。